Automatic  Wave Prussian Blue silver sky  gold splash B68940738D

2023.08.30

Automatic Wave Prussian Blue silver sky gold splash B68940738DTARTAROS/タルタロス

素材・技法:$紙幣・日本銀行券・金箔・水金箔・アクリル・ウレタン・木製パネル/2023年
サイズ:60.5×91.5cm

TARTAROSが仕掛ける
「知っているはずの絵」の更新体験

TARTAROS(タルタロス)が葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」を選んで自分のモチーフにしたのには理由がある。北斎が、自然も宇宙も神として描くスケールの大きな作家だからであり、何よりも多くの人が知っている浮世絵だからでもある。しかし、この作品を「これは知っている絵だ」と思って見る人は、作品に近づくにつれて見事に裏切られることになる。TARTAROSが描く荒波は、本物の1ドル紙幣で構成されているのだ。富士山の部分には千円紙幣の裏側にある富士山が使われている。画材として紙幣を使い始めたのは、金沢の銀行の金庫で展覧会をやったときから。「反響が大きかったですね。それからは、人間の背後のパワーを表現できると思って使っています」とTARTAROSは振り返る。人間によって価値を与えられた紙幣が、自然を描く作品の画材となる。見ていると、価値観が揺らぐ一瞬があるはずだ。

Automatic  Wave Prussian Blue silver sky  gold splash B68940738D

近くに寄るにしたがって、本物の紙幣を使っていることが徐々にわかってくるのがこの作品の見どころであり、面白さだ。すると突然、紙幣の価値によって思考の一部を乗っ取られる。仕掛けが分かった後に、紙幣を画材と思える人とそうでない人がいるだろう。TARTAROSは紙幣をカッターで切り、貼り込んだ上から線を描いている。背景は銀箔だ。その上にさらに金の波のしぶきが盛り上がっている。ディテールは複雑で、全体と部分を視線が行き来する。このシリーズを、縁起物として購入する人も多いという。絵のタイトルの末尾には、使われている紙幣番号の一つが入っている。

Automatic  Wave Prussian Blue silver sky  gold splash B68940738D

TARTAROS◎当代東京CONTEMPORARY TOKYO

1969年、石川県生まれ。日本大学芸術学部彫刻科中退。フィギュア原型師として国内フィギュアメーカーの原型を多数制作。プロダクトデザイナーとして、ディスクカバーがニューヨークMOMAデザインカタログに登録される。40代になると瞑想による神秘体験を契機に現代美術家へ転向。2013年 アートプロジェクト「TARTAROS JAPAN」の活動を開始。タルタロスとはギリシャ神話の地底神であり、世界中の神話に共通して現れる「生命が誕生し、還る世界そのもの」でもある。スピリチュアルな視点で歴史文明、偶像崇拝をテーマに紙幣素材の絵画と版画、瞑想絵画、偶像彫刻、独自のAutomaticPaintingのシリーズを発表している。

作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。制作の背景まで
踏み込んで、アーティストの想いを紐解きます。

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