イソギンチャク王国のアネモル姫

2023.08.30

イソギンチャク王国のアネモル姫Enpei Ito/伊藤 遠平

素材・技法:石粉粘土・ウレタンフォーム・アクリル絵具/2021年、2023年
サイズ:H24.3×W21.2×D22.4cm

立体作品が語り始める
伊藤遠平の壮大な物語世界

伊藤遠平(いとうえんぺい)は、自身が創った物語世界「海の物語ミーヤホーヤ」や「キノコの精霊と森の仲間たち」のキャラクターを、立体と平面の作品で表現するアーティストだ。森や海などの生物や、目には見えない精霊のかたちを自由に創造している。「海にはたくさんの生命がいて、たくさんの不思議があります。海をどう表現するか考えた時に、生命の日常を想像で膨らませてみようと思いました。それが海草の精霊ミーヤとホーヤになりました」と伊藤は語る。伊藤のキャラクターたちは、どんぐりのような、卵のようなフォルムが共通している。そのかたちはエネルギーの流れを象徴しているという。命の循環を感じさせる造形は、細部まで創り込まれている。

イソギンチャク王国のアネモル姫

「海の物語ミーヤホーヤ」では、ミーヤとホーヤという海草の精霊の日常が語られる。物語にはイソギンチャクの王国も登場し、そこにはアネモル姫という精霊のお姫様がいる。王国の見守りやお世話をしているアネモル姫は、おてんばで可愛いものに興味があり、ペットのキンギョモドキを飼っている設定だ。このキャラクターを表現する表情づくりや衣装の繊細な色使いは、伊藤の得意とするところ。台座になっているイソギンチャクの、ただものではない存在感にも注目したい。

イソギンチャク王国のアネモル姫

伊藤 遠平◎art gallery Komori

1976年、茨城県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。現在はギャラリーや美術館などでの発表を中心に、森や海など自然を舞台にした物語世界の創造にも力を入れており、「水と土の芸術祭2018」ではレジデンス(滞在制作)を行いながら絵画・立体作品による物語空間を表出させた。生まれ育った自然豊かな環境から受けるさまざまな生命のイメージを大切にしながら、生命の根源的な部分に少しでも迫れるよう自身の表現世界を追求している。

作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。制作の背景まで
踏み込んで、アーティストの想いを紐解きます。

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