Focus
2023.09.04
大きい猫Takaoki Tajima/田島 享央己
素材・技法:樟・アクリル絵具/2022年
サイズ:90.5×42.3×35.5cm
喜怒哀楽を内包する
田島享央己の新しい世界
この「大きい猫」は田島享央己(たじまたかおき)のターニングポイントとなる作品だ。彼は、二頭身の“アチャラカ”木彫で人気を博したが、その実力を裏付けるイタリア彫刻をほうふつとさせるような等身大の女性像も制作してきた。また、近年は平面制作にも注力しているが、ニュートラルなフォルムが印象的な立体に比べ、平面作品はストーリー性が強い。田島はこの5年ほど、これら3つの要素を融合することを模索していたが、まさに「大きい猫」によりそのもくろみがカタチになったと言えよう。
この作品でまず注目すべき点は色彩だ。十重二十重に施された光彩色と、ノミ跡とともに透けて見える木目の諧調は、田島の真骨頂とも言える。美しい光彩色が観る者の心を惹きつけ捉えて話さない。今後の田島作品について語る時、必ずこの作品が要になるだろう。
田島 享央己◎gallery UG
1973年、千葉県生まれ。愛知県立芸術大学美術学部彫刻科卒業。彼に備わったアウトローな気質は、彫刻だけでなく絵画領域にまでフィールドを広げ、幅広く活動している。2頭身の立体作品は、ニュートラルな立ち姿で見る者のさまざまな想像力をかき立て、人気に火を付けた。また、木彫作品からもうかがえる色彩感覚と空間構成のセンスが平面にも発揮されている。シンプルかつ大胆に構成され、隣り合った色と色との関係性が際立った背景の中にあるキャラクターは何とも不思議な表情や動きで描かれている。ニューヨークで個展が開催されるなど、日本にとどまらず海外でも人気上昇中である。