カップヌードルMAGNETITE

2023.09.04

カップヌードルMAGNETITESojiro Takamura/高村 総二郎

素材・技法:和紙に胡粉・岩絵具・膠・アクリル絵具/2022年
サイズ:53.0×53.0cm

圧倒的な存在感を持つ
高村総二郎のカップヌードル

日本人なら誰でも知っているカップヌードルが、黒い背景から飛び出してくる。高村総二郎(たかむらそうじろう)の「カップヌードルMAGNETITE(マグネタイト)」では、カップヌードルの容器が強烈な印象のモチーフであることを改めて認識させられる。「ウォーホルはキャンベルスープ缶をシルクスクリーンの作品にしました。日本では手作業に親近感や安心感がある国なので、カップヌードルを手で描いているんです」と、高村は手描きに意味を感じている。背景は岩絵具で描かれていて、黒さに特別な存在感がある。カップヌードルの部分にはアクリル絵具を使っている。日本画で白を表す胡粉を使うと、真っ白に見えずに黄色く見えるので、強い白さを出すためにチタンを含む白を選んでいる。

カップヌードルMAGNETITE

バックの黒には岩絵具を使った。MAGNETITE(磁鉄鉱)というタイトルは、黒の岩絵具の原料から付けられている。角度によってきらめきが見えるのは、鉱物由来の岩絵具ならでは。岩絵具という伝統の画材とアクリル絵具という現代の画材の組み合わせがスリリングだ。カップヌードルのふたがめくれているのは自分の体験から描いたもの。お湯を注いだ後、ふたをシールで貼るようになっているのに、つい面倒でそれを貼らずにふたが開いてしまったところ。多くの人にある小さな体験への共感が、高村の世界への入り口になっている。

カップヌードルMAGNETITE

高村 総二郎◎Artglorieux GALLERY OF TOKYO

1965年、大阪府生まれ。「刺青」「四畳半」「纏」「肖像画(政治家)」などさまざまなシリーズを発表している。中でも「カップヌードル」は彼の代表的なシリーズ。ウォーホルが大量消費の象徴としてキャンベルスープを描いたのなら、日本人である自分は「カップヌードル」を!という視点から描き始めた。しかしウォーホルと決定的に異なる点は、高村の作品はシルクスクリーンの大量生産ではなく、正確かつ丁寧に描き出した1点ものだということだ。現代アートという難解さも感じる芸術に対し、日本人ならではの細やかな伝統技術と技法を用い、絵画という表現から逸脱せず、数々の作品を生み出している。

作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。制作の背景まで
踏み込んで、アーティストの想いを紐解きます。