2024.04.03
no.1499_graybackTsumi Cotoh/古塔 つみ
素材・技法:Oil on canvas/2024年
サイズ:H72.7×W72.7cm(S20)、オリジナル作品
自覚していない記憶と文脈を
描き出す古塔つみの最新手法
表情がうかがいにくいリアルな顔と対照的にアンリアルな髪型(またはかぶりものか骨格かも)をした少女が、強烈な印象を残す古塔つみの作品。アニメを見て育った人なら、デビルマンを思い起こすだろう。しかし、デビルマンを象徴する形は原型を留めずに抽象化している。古塔は、「このシリーズはその表情で(スーパーフラットの)次(の文脈)なのか亜(の文脈)なのかを問うてみました。キャラクターを意識した頭部(文脈)に、鏡を見て今気づいた表情、生まれつきであるかのように気にもしない表情」と書いている。スーパーフラット時代の先を切り開く一人という自覚を持つ古塔の、最新の表現手法に注目したい。
大胆なストロークで表された頭部は、強烈なスピードを感じさせる。それはある大きさになると、突然空中に霧散していく。リアリティの消失を描くこの手法で、古塔は新しいステップに踏み出した。車窓に現れた一瞬の風景のようで、わかる人にはわかる仕組みの造形になっている。対照的に少女の目はじっくりと精密に描かれている。とらえどころがない目線、強調された大きさが現代的だ。この目が、自分の頭部には関係がないような表情を生んでいる。それは、自覚しなくてもある文脈(ここではデビルマンであること、それを知っているということか)を持つ人々の宿命ということなのかもしれない。
古塔 つみ◎MEDEL GALLERY SHU
愛知県生まれ。年齢、性別非公開。デジタルイラストと現代美術作品の境界などそもそもないかのような意識のもと、大量消費されるイラストやその印刷技法に対する独自の解釈で現代美術作品を産み落とすことに成功。シルクスクリーン、ジークレー、浮世絵木版画、そしてハンドペインティングと多様な作品はその多くをユニーク作品としている。大量消費を前提にした技法であえてユニーク作品に限定することで、商業品からの評価の文脈に風穴を開けてきた。ノスタルジックでありつつもその中から未来を感じさせる作品やコミカルなポーズの作品など、ウイットに飛んだ作品を得意とする。昨今の都会的な女性キャラクターを描くアーティストとは一線を画すアプローチにチャレンジし続ける現代美術家。