2023.06.22
Drip color link-fiction America.
Drip color link-fiction Shizuoka.Taisuke Kondouh/近藤 大祐
2023年
サイズ:ともに、93.5×39.8×5.0cm
地元静岡で展示される
近藤大祐の最新作
景色と人が重層的に織りなす画面の一部に、鮮やかな色が施されている近藤大佑の作品。色彩による立体感を感じるほどだ。通常は場所の取材を重ねて、景色を再構築しているが、製作時間の半分は設計図と呼ばれる構図と色の指示図を作ることに費やされる。色を決めた後に絵具を作り、注射器に入れる作業にも時間がかかる。アクリル絵具が注射針に詰まってしまうため、注射器は一つの作品に何百本も使う。多すぎるので、本数は数えたことがないという。
近藤の彩色は独特だ。アクリル絵具を注射器に満たし、それを丁寧に画面に載せていく。実際に認識された風景や人物が、模様の集積に転換されていくようだ。筆でないものを試しているときに見つけたという注射器に詰める絵具の色は、その場所のイメージや印象から選ばれている。手法はアナログだが、絵具は塗るのではなく、置かれている。絵具の表面は樹脂のような質感で、筆の痕跡とは違う均質なものになる。つるりとした表面が小さな驚きとなって、近藤の作品に力を与えている。
近藤 大祐◎GALLERY TOMO
1993年、静岡県生まれ。京都造形芸術大学大学院芸術専攻ペインティング領域修了。学生時代から作品を発表し、個展を中心に据えつつ、さまざまなアートフェアや催事へと軸足が伸びる中で評価を高めてきた。その制作のプロセスは独自性のあるもので、肉眼とカメラの両面で取り入れた世界認識をデジタルに置き換えて数値化し、もう1度注射器というアナログで絵具を絞り出すという仕事だ。画面には、近藤が「自らの感じた世界のリアルを写真では表現できない物質感で」と語る、都市の見せるさまざまな表情やそこを往来する人々の熱気、季節感を色として抜き出したエレメントが凝縮されている。