2024.04.09
MANUAL FOCUSHARUNA OIKAWA/及川 春菜
素材・技法:ガラス・フェイクフラワー・木パネル/2023年
サイズ:H50.0×W40.0×D15.0cm
「立体的なモザイク画」を
ガラスのマジックで出現させた及川春菜
凹凸がある板ガラスによって、中に閉じ込めたものがモザイク状に見える。この「MANUAL FOCUS」を発表した及川春菜はガラスを使って作品をつくってきたが、今回の作品は工芸的な世界とは一線を画している。凹凸ガラスによって、中にある造花の細部は曖昧になり、全体が立体的なモザイク画のように見えている。捉えどころのないものを見ているという感覚が増幅していく。「工芸というくくりから作品を昇華させたい」と制作したシリーズは、見えるはずのものを一変させることに成功している。
この作品には15cmほどの厚みがあり、壁に掛けて鑑賞するようになっている。作品の天地左右にも正面と同様の凹凸のあるガラスを使って箱状にしているので、側面から見ても中の造花はモザイク状に見える。ガラス越しの造花は、色彩だけはわかるのだが、輪郭はジャギーになっていて、細かいところはわからない。そのために作品を見ている時間が自ずと長くなる。見えないものをなんとか見ようとして、焦点を合わせる努力にも似た目と心の動きが生まれてくることになる。
及川 春菜◎四季彩舎
1993年、宮城県生まれ。2018年東京藝術大学美術学部工芸科鋳金卒業後、同大学大学院美術研究科修士課程工芸専攻陶芸(陶・磁・ガラス造形)入学。主にガラス素材を使い作品制作を行う。sympathy(共感)をテーマに、柔らかな透明度と溶け混じるガラスの表情が特徴の技法を用いて、フラワーベースやインテリア、オブジェなど、幅広く制作している。焦点を曖昧にさせるガラスボックスのアート作品やお守りをテーマにした彫刻作品の他、お皿や石けん置きなどの日用雑貨も手がけている。