2024.04.09
円相Yuzoh Etoh/江藤 雄造
素材・技法:漆芸、パネル・本漆/2024年
サイズ:H 70.0×W 51.5cm
江藤雄造が描く漆絵の最新作は、
吉祥を表す金魚の円相
禅の完全な悟りを表す円相の形を、金魚の集団によって描いた江藤雄造。江藤は、仏壇の蒔絵や寺社建築の漆部分の修復を手がけている漆芸家であると同時に、漆を使ったオリジナル作品を制作している。このシリーズでは、円相と金魚という吉祥のアイテムを重ねることで、現代の縁起のよい絵柄を生み出している。「この作品で使っている本漆は、湿度と温度によって毎日色が変わります。夕立が降っただけでも色が変わる繊細なものです」と江藤。鮮やかな色漆の発色とムラのない黒漆の表面は、高度な塗りの技術を表している。
本漆で描かれている金魚はフナのような形の和金とずんぐりしたりゅう金。ほとんどが赤いが、中には紅白の金魚がいて、さらに祝祭感を醸し出す。この紅白の金魚を探すのも楽しい。円相の始めの部分には金魚が密集しているが、まばらな部分や他から泳いでくるものもあり、池の中の金魚の動きを再現しているのがわかる。江藤は金魚を写実的には描かず、模様のように単純化した。それによって全体が円相であることを強調している。円相は普通、筆と墨で書かれ、右上から始まって筆が進んでいく。この作品もそれにならって、金魚の群が右上から円を描いて泳いでいく。
江藤 雄造◎GALLERY CLEF
1982年、兵庫県生まれ。兵庫県龍野実業高校デザイン科を卒業し、漆芸家である父親の國雄氏に師事。その後香川漆芸研究所に入所しさらに漆芸を学ぶ。縄文の昔から使用されている着色・接着・補強材である漆を用い、その伝統技法を継承しながら、さまざまな素材を使用して新しい漆の可能性を引き出し、縁起物モチーフの平面作品を描く。その卓越した漆の技術を生かし、国指定重要文化財兵庫県「相楽園 船屋形」や世界遺産に指定された奈良県「春日大社」を始め各地の重要文化財の修復に携わるほか、金継ぎ技術の普及にも尽力している。日本工芸会研究会員・兵庫県工芸作家協会理事。