草むらで

2024.06.20

草むらでEmi Hiramatsu/平松 絵美

素材・技法:パネル・雲肌麻紙・矢車・岩絵具/2024年
サイズ:H41.0×W31.8cm

平松絵美の夢のような空気感は
大好きな日本の画材から生まれる

「和紙や岩絵具などの、日本画の画材が好き」という平松絵美。質感が気に入って使っている雲肌麻紙(くもはだまし) の表面の美しさを、岩絵具で塗りつぶして消さないようにしたいと、矢車(やしゃ) という植物染料で紙を染めて自然に古びた質感を出している。この作品は、道端の草と本とカラスという、ありえない組み合わせで構成されているが、ひとつひとつのものはリアルに描かれている。よく見ると、カラスは赤い糸をくわえている。これは平松が画面の中にある関係性を描くために使っているアイテムだ。本は平松の蔵書だという。地面に本を置く構図も、染められた雲肌麻紙によって違和感がなくなっている。

草むらで

平松が描くカラスの顔がかわいいのは、その目が愛らしいから。「カラスは嫌われることが多い鳥ですが、よく見ると愛嬌のある目をしています」という。じっくり観察したからこそ表現できる表情だ。下から2番目の本の表紙に載っている赤い実は、アトリエの近所で採ったもの。ナンテンのように見える。草も道端のなにげないものが好きで、採ってきて実物を見ながら制作している。リアリティーある夢幻の世界が、いつまでも目線を誘う。丁寧に書き込まれたディテールに愛着がわく作品になっている。

草むらで

平松 絵美◎Nii Fine Arts

1979年愛知県生まれ。日本画家。現在は大阪在住。2002年名古屋芸術大学日本画学科卒業、翌年名古屋芸術大学研究生修了。2001年から3年連続で日展に入選。2015年 「豊穣なるもの-現代美術in豊川」出品。2018年「シェル美術賞」入選。2023年、2024年「FACE展」入選。大阪・名古屋を中心に個展やグループ展を多数開催している。

作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。制作の背景まで
踏み込んで、アーティストの想いを紐解きます。

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