2024.06.20
BlueMoonHiroto Rakusho/裕人 礫翔
素材・技法:箔アート/2022年
サイズ:Φ37.0cm
奇跡を象徴する青い月は
裕人礫翔の箔の「魔法」でできている
箔とは、金や銀などの金属を紙のように薄く延ばしたもので、日本では絵画や工芸作品に使われている。裕人礫翔は、西陣織の箔伝統工芸士として仕事をした経験から、箔のさまざまな優れた技術を世界に伝えるために、「箔アーティスト」として活動している。月を長年テーマにしているのは、太陽の光を受けて光る月と箔が、どちらも光を受けて輝く存在だというところから。今回の作品は、「奇跡」を意味する「Blue Moon」。青や緑に輝く銀箔が、月の静かな佇まいを表現している。
全面に銀箔が使われた作品。銀箔は、酸化するにつれて銀色から金、赤、青、緑、紫、黒と変化するが、裕人礫翔はその色の変化を利用し、銀箔を人工的に酸化させて青や緑になったところで止めている。西陣織で使う引箔*の色変化の技術を使った表現だ。この作品は、鉄製の円形支持体に銀箔が貼られている。支持体はいくつかのパーツを組み合わせたもので、ところどころにあえて隙間を作ってある。支持体の凸凹や隙間は表面にも影響していき、まるで実際の月のような、複雑なニュアンスを作り出している。箔は日本製だけでなく、イギリス製やイタリア製も使うという。
*引箔とは和紙に漆で箔を貼り、細く切って金や銀の糸として帯などに使うもの。
裕人 礫翔◎Artglorieux GALLERY OF TOKYO
1962年京都府京都市西陣生まれ。箔アーティスト・箔伝統工芸士。箔伝統工芸士の父から家業を受け継ぎ、40歳まで西陣織の箔伝統工芸士として活躍。箔の伝統技術を生かして、神社仏閣の屏風や襖絵などの箔部分の復元を担当する。40歳から、「自身が引き継いだ日本の伝統技術を、日本だけではなく世界に伝え残したい」という思いから、唯一無二の箔アーティストとして、ニューヨーク、パリ、ロンドン、クウェート、シンガポールなど、世界各地で作品を発表。国内でも注目されている。近年では企業やホテルのシンボルとして作品を発表し、映画・テレビ・雑誌などでも作品が取り上げられている。代表作品は「月光礼賛」「〇△□あるがままに」。