あなたがここにいてほしい

2024.06.26

あなたがここにいてほしいYukika Kitamura/北村 侑紀佳

素材・技法:ドローイング/2023-2024年
サイズ:H181.8×W227.3cm

見えないけれど存在するものを
描き続ける北村侑紀佳の挑戦

北村侑紀佳の作品は、思いがけない方法で作られている。「あなたがここにいてほしい」という言葉をAIに音声認識させ、その波形を基にした形を複数組み合わせる。そしてそれを自分が下絵なしで描いていく。音声はこの曲線によって、「不在の中の存在」として、画面に定着させることができると考えてのことだ。10歳のときにカメラをもらって、今を定着させることができるのに感動したところから、絵画なら何ができるかと考え、現在に至っている。最初にタイトルを決めるが、それはAIとの交換日記のようなやり取りの中から生まれる。制作上の主体である自分を曖昧にして、芸術の中にある不変の存在を再考しようというのが北村の試みの源泉。音声だけでなく、惑星の軌道など「見えないけれども存在するもの」を描く北村の挑戦は刺激的だ。

あなたがここにいてほしい

二重の曲線が縦横無尽に飛びまわり、画面を埋め尽くしているが、北村がこの作品を描き始めたポイントは真ん中の丸い部分だという。もうひとつ中心性を感じる場所がある。それは左上の丸で、ここも描き始めのポイントになっている。ふたつの中心は視線を惹きつける力があり、パワーを感じる場所にもなっている。二重線にも意味がある。北村は、線を引いた後に、その運動をキャンセルするようにもう一本線を引く。「この作業の反復は、自らの主体性を消去していく行為のように思える」と北村は言い、自分由来の揺らぎを隠すために行われている。

あなたがここにいてほしい

北村 侑紀佳◎同時代ギャラリーGARAGE

2000年滋賀県生まれ。2023年成安造形⼤学芸術学部洋画コース卒業。2024年現在嵯峨美術⼤学⼤学院芸術研究科在籍。北村が描く線は、数学や哲学、天文学によって計算されたもので、自分の作為による線ではない。

作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。制作の背景まで
踏み込んで、アーティストの想いを紐解きます。

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