すみわたるる

2024.06.26

すみわたるるMiyabi Katayama/片山 みやび

素材・技法:アクリル・ガラス/2023年
サイズ:H33.0×W36.0cm

人と自然のつながりに気づかせてくれる
片山みやびのガラス・フュージング

リトグラフやペインティングを制作していた片山みやびは、デンマークでガラス・フュージングに出会った。板ガラスを窯に入れて800度で焼き付け、癒着させる手法だ。片山はこの技法を使って、ガラスで描画する感覚で制作している。この作品では、緑のガラスが森の空気や木々の香りを思わせる。森や林が近くにある自然豊かな場所で育ったという片山。「葉や木の実を拾い、日が暮れるまで遊んでいたのを覚えています。土を踏む感触、夕暮れの空の色、季節ごとの風の香り。私の五感に刻まれたものは、作品のイメージの原点となり生き続けています。生活の中で、当たり前に人と関わるアートが理想です」と語る。

すみわたるる

片山は、窯で焼成してガラスを溶着し、さらにガラス絵の手法で草花を描く。光を含んだガラスが、自然の中に身を置く気分にさせる。繊細なタッチの草花は森の近景にあるように見え、重層的な風景を作り出している。緑色のガラスの上の丸いガラスは、拡大鏡の役目を果たす凸レンズの形態になっている。この丸いガラスを通して見ると、下にある緑色のガラスの一部分が大きく見えてくる。森を見るための複数の視点を提供しているようだ。ガラスという、光を透過しつつ色も表現するメディアが、自然を表現する際に大きな役目を果たしている。

すみわたるる

片山 みやび◎SMART SHIP GALLERY

1965年兵庫県西宮市生まれ。1990年京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻版画科修了。2010年~11年文化庁海外派遣研修員としてデンマークにて滞在制作。デンマークでガラス・フュージングの技法に出会い、ガラス制作を始める。2017年「亀高文子記念赤艸社賞」受賞。国内外の美術館をはじめ、帝国ホテル、羽田空港ANAラウンジなど数多くのパブリック・スペースに作品が収められている。

作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。制作の背景まで
踏み込んで、アーティストの想いを紐解きます。

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