the horizon peeks out

2024.06.26

the horizon peeks outYumina Koumura/甲村 有未菜

素材・技法:麻紙・岩絵具・箔・カラメル/2024年
サイズ:H41.0×W41.0cm

抑制された色と形で感情を揺さぶる
甲村有未菜の新しい日本画

画面に描かれているのは、海と防波堤。水平線と防波堤が画面を横切り、水平を強調して、遠くを見せる風景になっている。空は麻紙の地で空気感を漂わせる。防波堤は、銀箔の上に粒子の粗い岩絵具で彩色し、さらに紙やすりをかけて、海風で風化したコンクリートの質感を出したもの。狭い面積なのに存在感があるのは、積み重なるタッチによるものだ。海は黒群青色の岩絵具で表現されている。黒に近い群青色は、海にまつわる記憶を呼び起こす。単純化された風景は、色やディテールによってさまざまなことを思わせる。甲村は、質感を描き込むことで感情を揺さぶることに成功している。

the horizon peeks out

防波堤の右上には波しぶきが上がっているのが見える。ここにはカラメルを使っている。甲村は、渋い色合いで透明感があり、しかも質感のあるカラメルを好んで使う。日本画で使われる金砂子(金箔を細かく砕いたもの)のような役割を果たしているのが面白い。防波堤はこの作品のポイントで、リアリティーを感じさせながら、抽象的な表現にも見える部分だ。熱を加えて着色した銀箔に、岩絵具でコンクリートの風化の様子を描いている。この近景と水平線の間を視線が行き来することで、見る人の海の記憶が呼び覚まされるようだ。

the horizon peeks out

甲村 有未菜◎ギャラリーMOS

1992年愛知県生まれ。愛知県立芸術大学日本画専攻卒業。2015年「第29回三菱商事アートゲートプログラム」に入選。2017年「再興第102回院展」に初入選、「堀科学芸術振興財団文化芸術支援事業Dアート展」で優秀賞を受賞。2018年「再興第103回院展」、2019年「再興第104回院展」入選。2020年「第1回三越伊勢丹・千住博日本画大賞」、「ギャラリーへ行こう2020」に入選。

作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。制作の背景まで
踏み込んで、アーティストの想いを紐解きます。

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