2024.06.26
Waterfall MansionYuki Ideguchi/出口 雄樹
素材・技法:木製パネルに石膏下地、膠・胡粉・スプレーペイント・ピグメント
サイズ:H90.0×W90.0cm
出口雄樹の選んだ鮮烈な青が
幻想的な滝を作り出す
出口雄樹は、ニューヨークに住んでいたときに、滝が流れる高級住宅のことを知った。北斎の「諸国瀧廻り(しょこくたきめぐり)」とこのマンションから着想したのが青い滝のシリーズだ。滝は抽象化されて線の集合で表されている。「私はスキューバダイビングをして海の青に触れ、剣岳や北岳に登り空の青に触れました。青の深淵に触れるとき、その美しさに心をうたれます。この作品は、新たな青の美しさを作ることに挑戦したシリーズでもあります」という出口。ウルトラマリンブルーの岩絵具が、幻想的な青い滝を実現している。滝の神体性と青の神聖なイメージが融合されて、洋の東西を超えた聖なるものが生まれた感がある。
画面全体を彩る、明るく美しい青色が印象的だ。ラピスラズリという鉱物を砕いた、ウルトラマリンブルーの岩絵具を使い、スプレーと粉末顔料、日本画の技法を組み合わせた新しい方法で制作した。「青色は洋の東西を問わず、神聖な色として使われていました。青はキリスト教美術では聖母マリアの衣に使われ、仏教の薬師瑠璃光如来の瑠璃は、ラピスラズリを指します」という出口。滝に重ね合わせて描かれた曲線は目線を誘導する。滝の水が落ちていく先で曲線が始まり、上へと立ち上っていく。この曲線は水の循環も表しているという。
出口 雄樹◎Shibayama Art Gallery
1986年福岡県生まれ。東京藝術大学日本画専攻を卒業後、ニューヨークで制作を行い、国内外で多数の個展・グループ展に参加。大学在学中に最高賞を受賞。三菱商事アートゲートプログラム奨学生に選出され、海の日芸術祭で最高位賞を受賞。また、公益財団法人吉野石膏美術振興財団や国際交流基金から助成を受けている。2019年に帰国し、京都府を拠点に活動。同年、歌手の星野源のアルバムジャケットを手がけた。名古屋、新宿、福岡、京都、仙台、千葉、渋谷と各地で個展を開催。現在は京都芸術大学美術工芸学科の専任講師を務めている。上賀茂神社、北原照久コレクション、明王物産コレクション、Leo Kuelbs Collectionに作品が収録されている。