ℏ- particle / void #4

2024.07.02

ℏ- particle/void #4Naoto Fuchigami/淵上 直斗

素材・技法:パネルに半導体・エポキシ樹脂/2023年
サイズ:H45.5×W53.0cm

画材として半導体を使う
淵上直斗の理系アート

きらきらと輝いている円は、細かく砕いた半導体で描かれたもの。淵上直斗は半導体を砕き、ふるいにかけて細かさをより分け、透明な樹脂で画面に定着させている。それは鉱物を砕いて作る岩絵具の作り方と同じだ。タイトルに使っているℏ(エイチバー)とは、換算プランク定数、ディラック定数を表す単位で、量子力学の基本定数として使われる。「半導体をこの世界と人類をつなぐものとして捉えています」という淵上は、半導体を使うことで宇宙への憧憬や畏怖を表現する。半導体の粒で作られたモチーフは、粒子にも天体にも見えてくる。「新しい概念をいかに生み出すかという現代アートと、現象や原理を見つけ出す科学は似ている」と感じている。

ℏ- particle / void #4

分厚い樹脂の中に半導体のかけらが閉じ込められている部分は、夜空の銀河を見るようだ。樹脂を複数回かけ層にすることで、半導体の粒のレイヤーを作っている。半導体は人間が作り出した英知の結晶だが、この作品では宇宙を描き出すのに自然な素材に見えてくる。角度によって虹色に光るのは、回路を形成するために半導体表面に施された薄膜によるもの。シャボン玉などと同様、構造色の原理で虹色に光るが、構造が細かいためか色が濃い。半導体裏面には回路が焼き付けられておらず鏡面のため、半導体の破片を表に向ける作業をした後、樹脂で定着させている。

ℏ- particle / void #4

淵上 直斗◎TOMOHIKO YOSHINO GALLERY

1995年兵庫県神戸市生まれ。大手企業でSEとして勤務しながら、絵画を独学する。2021年に会社を退職し、以降は美術家としての活動を中心に据えて、ギャラリーや百貨店で作品を発表してきた。2023年からは量子力学をテーマに、画材として半導体を用いた作品シリーズを展開している。2022年にはアートイベント「100人10(100人展)・ 2022」や公募展「いい芽ふくら芽 in Tokyo 2022」で入選を果たし、後者ではTOMOHIKO YOSHINO GALLERY賞を受賞。さらに2024年には「第9回 SHIBUYA ART AWARDS」にも入選している。

作品に込められた「想い」それぞれの物語

作品を深く理解して、もっと好きになる。制作の背景まで
踏み込んで、アーティストの想いを紐解きます。

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