2023.06.22
porte-bonheur ポルト・ボヌール・幸運の御守りHiroto Rakusho/裕人 礫翔
素材・技法:本金箔 箔のアート/2021年
サイズ:114.5×78.5cm
裕人礫翔が追求し続ける月は、
金銀箔を駆使した新たな存在
20年間、月をテーマにしてきた裕人礫翔。金銀箔を使った新しい表現で、パリから見た月を描いている。「月の優しさや温かさを表したいと願っています。つらい時代に下ばかり見ていましたが、ふと夜空を見上げたとき、月からがんばれというメッセージをもらいました。それ以来、月を描き続けています」と礫翔は語る。文化財の修復も手掛ける作家の確かな技術と、揺るがないテーマが強烈な印象を残す。織物の町である京都・西陣で箔の仕事をする家に生まれた作家の、現在の立ち位置も興味深い。
「porte-bonheur(ポルト・ボヌール・幸運の御守り)」と名付けられた今回の作品は、見る人に幸せを運びたいという作家の思いが結晶したもの。一見すると月のようには見えないが、作家が月をイメージした世界が描かれている。金箔を何層にも重ねた表面は凸凹になっていて、見る人によってはそこにも月を感じるかもしれない。下地には色を差してあり、摺箔という手法でそれをのぞかせる部分もある。「色の強弱を表すのもテーマ」という礫翔は、アクリルをはじめとする画材を自由に使って、織物を織るように画面を構成する。立体的にも見える色の存在を実際に感じてほしい作品だ。
裕人 礫翔◎Artglorieux GALLERY OF TOKYO
1962 年、京都府生まれ。箔アーティスト・伝統工芸士。 父であり京都市伝統産業技術功労者・西山治作に師事し箔工芸技術を学ぶ。2002 年から創作活動を本格化。これまでは「引き立て」の意匠であった箔を主役とした作品を手掛ける。この唯一無二の箔工芸の技術を駆使し、「月」をテーマにした創作を中心にさまざまな作品を発表。さらに箔の技術を生かし、文化財保存を目的として進められているデジタルアーカイブ制作事業にも参画。その作品は、西陣織のために完成された箔の「工芸的な美」の枠を超え、箔を通して見えてくる「本質的な価値」を浮かび上がらせ、世界のさまざまな分野で注目を集めている。