2023.06.22
PRAYER- MountscapeTaku Shinyama/新山 拓
素材・技法:日本画・30P/2021年
サイズ:65.2×90.9cm
新山拓の祈りは山の形をしている。
日本の自然観を表現した新作
新山拓は山を肖像画のように描いてきた日本画家。風景画を描く中で、大学院のころに山に出合った。特に岩肌に感動してそれを描いていこうと考え、森林限界を超えた山に登っては描いてきた。中でも雪山を描いた作品に定評がある。「雪山を描くのは、きれいでいて同時に怖さがあるからです。雪山は登るのも怖い、死と隣り合わせの世界で、普段の山ではありませんから。画面にコントラストが強く出るのもいいと思います」と言う。飛ぶ雪片は、山に吹く強風を想像させる。
「PRAYER- Mountscape」と名付けられた作品には山の名前がない。特定の山を描くというより、作者の思いを表した作品になっている。「このシリーズは、祈りをテーマに描いたものです。日本人が持っている自然への感謝、祈りが形になった山です。山を神として捉えたと言ってもいいと思います」と言う新山。画面にそびえる山は、荘厳で威風堂々としていて、尊敬の念を感じさせるものになっている。大切にしているのは岩絵具の素材感だ。岩肌のディテールを描きたいと思って山を描き始めた新山は、砂状の荒い岩絵具を使っている。濃紺で描かれた空は宇宙そのもの。時間を感じない、永遠の世界を描き出している。
新山 拓(Taku Shinyama)◎KAWATA GALLERY
1975年、鳥取県生まれ。多摩美術大学大学院研究科日本画修了。新山が描くのは、自らが単独で登頂した山々である。しかし単に山の造形を描きたいということではなく、そこで見て、聞いて、感じた、自分から宇宙までつながる自然そのものの在り様を、強い思いを込めて画面に表している。岩絵具を厚塗りすることで岩肌の荒涼とした印象を表現し、光の角度によって変化する絵具の輝きは木々や川のきらめきをほうふつとさせる。台北や香港などアジアを中心に熱狂的なコレクターが蒐集しており、今後のマーケットで評価される可能性が高い注目の作家である。