2024.07.02
昔からここにいるTakumi Tsuchida/土田 匠実
素材・技法:アクリル・キャンバス/2023年
サイズ:H 91.0×W116.7cm
土田匠実が描くキャラクターは
自然と一体化した心象風景の中に
土田匠実は地元の豊かな里山の自然に影響を受けて、心象風景にも見える作品を描いている。この作品では、人物とキツネが目をひきつける。寝そべっているキャラクターは男でも女でもなく、また大人でも子供でもない存在だ。「見る人が絵の世界に入り込みやすくすることを意識して描いてます」と土田はいう。背景にはお稲荷さんの社が描かれている。キツネには尾がふたつあり、現実を超越したものとわかる。タイトルの「昔からここにいる」は、このキツネの言葉のようだ。「動植物がほどよい距離感にある状態を描いています」という土田。不思議な存在を描きながら落ち着いた画面になっているのは、自然を取り込んだ画面のバランスによる。
左奥に描かれているお稲荷さんの小さな社は、この作品の背景を語っている。土田が住む地域の近くには、稲荷を祀る神社が3カ所もある。五穀豊穣を祈る稲を祀るのがお稲荷さんが多いことからは、稲作が盛んな場所だったことが想像できる。現在も自然が豊かに残るのは、この稲荷の存在によるのかもしれない。土田が描くキャラクターは属性がわからない外見をしている。男女の区別も感じさせず、歳もわからない。「自分自身の投影でもあり、同時に自分以外の誰かを描いてます」と土田がいうこのキャラクターは、作品世界の道案内をしてくれる。
土田 匠実◎当代東京 CONTEMPORARY TOKYO
1994年神奈川県生まれ。横浜美術大学美術学部美術学科絵画コース卒業。心象風景を織り交ぜた人物やギターをモチーフにした作品を制作。作中に登場する「ハッカちゃん」と名付けられた黒い丸いキャラクターは、不安やプレッシャーの象徴として加えられている。最近は地元の里山の自然からインスピレーションを受けて、自然を主題にした作品制作にも取り組んでいる。2016年第52回主体展新人賞、2016年第49回かわさき市美術展奨励賞、2018年第51回かわさき市美術展優秀賞など。