2024.07.02
BOSTON CRAB#03Mio Okazaki/岡崎 実央
素材・技法:Acrylic on Canvas/2024年
サイズ:H80.3×W80.3cm
プロレスをキュビズムで描くことを
発見した岡崎実央の観察眼
高校時代にプロレスに興味を持った岡崎実央。武蔵野美術大学卒業後は2021年まで『週刊プロレス』の記者として、試合記事はもちろん、写真集の編集や不定期のアート連載を担当した。プロレスは、リングの周りを観客が囲み、それぞれの席から闘いの美しさや迫力を観る。その多視点をキュビズムの画法で表現することで、写真や映像では伝えられないプロレスや格闘技の魅力を描き出している。ピカソやブラックなどに代表されるキュビズムは、さまざまな角度から見た対象の形を一つの画面に収める技法だが、プロレスを描くのにぴったりと考えたのは彼女の発見である。今後は立体作品も作りたいという岡崎。レスラーの身体、技の威力、観客の声が描き込まれた画面からは、プロレスへの愛があふれている。
手首に巻かれた白いテーピング、黒いショートパンツ、リングシューズはプロレスラーの象徴。中でも相対的に大きく描かれている手と足は重要な部分だ。タップを堪えている手やロープに逃げるときの手などには思い入れが強く出ている。
また、レスラーの印象を決定づける大事な胸筋も、必ず描かれている。目も重要で、上のほうにある吊り上がった目が、技をかけているレスラーのもの。下の下がり目が“技”をかけられているレスラーのものだ。また、彼女はアメリカでプロレスを観戦したときに、「お客さんの声や解説の声も含めてプロレスだ」と感じ、画面に声や音を描き込むようになった。四方八方から聞こえてくる音が再現されている。ディテール一つ一つ解読するように見れば、プロレスを多彩に表現していることがわかってくるだろう。
岡崎 実央◎Gallery Seek
1995年北海道札幌市生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科を卒業後、株式会社ベースボール・マガジン社に就職、『週刊プロレス』編集部に配属される。アートとプロレスを組み合わせた不定期連載「闘藝」のページなどを担当。現在は退職し、プロレスをモチーフにした作品を制作している。 2019年武蔵野美術大学卒業制作で優秀賞受賞 。2021年第1回 ARTIST NEW GATE 中島健太賞&リキテックス賞受賞。2021年アートフェアアジア福岡、2023年ART BUSAN 2023、ART TAIPEI 2023 、2024年 ART FAIR TOKYOに出展 。