Newcomer
Newcomer Introduced by 山口祥平(大丸松坂屋百貨店 アートバイヤー)
アートに宿る深い魅力を伝えたい。
作品に込められたアーティストの魂を、
ART365が見いだします。
スペシャル対談 高村総二郎 Sojiro TAKAMURA
『アンビバレントな探求者』
「美大の学生時代、写生にまったく興味がなかった」と言いながら、カップヌードルを正確に描き出す高村総二郎。ポップアートと日本画を繋ぐ作家だ。浮世絵とカップヌードルを組み合わせたシリーズで、その真価が発揮されている。
あのロングセラーの密やかな
美学をポップアートに
「昭和の匂いがするものが好き」な高村総二郎が描くのは、カップヌードルをはじめ、金鳥蚊取線香やマジックインキなど長年売れている商品。「長命なものには美学があります。その中でも見ると匂いがするものを描いています」という。カップヌードル・シリーズは、アンディ・ウォーホルのキャンベルスープ缶を高村流に変換した日本のポップアートとして人気がある。シルクスクリーンを使ったウォーホルと違って、すべてを手描きで製作する高村は、「カップヌードルの蓋には苦労があるんです」という。ロゴや成分表示などを全部描いているからだ。「写生をしないかわりに時間をかけることにしよう」と考えて、丁寧に描き込んでいる。
歌川広重とシーフードヌードルの
「これしかない」マッチング
注目したいのは、江戸時代の版画とシーフードヌードルの絶妙なマッチングだ。高村は、歌川広重が描いた「六十余州名所図会」の中の「阿波鳴門風波」を選び、シーフードヌードルと組み合わせている。「広重の浮世絵も1850年にはポップアートだったんです。平面的で絵柄に輪郭があり色も鮮やかで、1960年代の表現と合う。海の絵ですから、内容的にもシーフードヌードルとぴったりです。広重は情緒があって好きですね」と高村は言う。「ここしかない」という場所にシーフードヌードルを配し、渦潮の色合いもロゴの色と合わせている。版画に使われる和紙の質感まで、刷り込み刷毛で再現しているのも見どころだ。
高村 総二郎Sojiro TAKAMURA
[Artglorieux GALLERY OF TOKYO]
1965年大阪府生まれ。1988年京都市立芸術大学日本画専攻卒業。2004年第10回尖展(京都市美術館)。2008年第27回損保ジャパン美術財団選抜奨励展(東郷青児美術館)。2011年第5回トリエンナーレ豊橋星野眞吾賞展三頭谷鷹史推奨(豊橋市美術博物館)。2013年今日の墨の表現展(佐藤美術館)。2014年尖20回記念展(京都市美術館)、第6回トリエンナーレ豊橋星野眞吾賞展準大賞(豊橋市美術博物館)、ホテルニューオーサカ心斎橋。2015年YUMI KATSURA GLORIOUS RIMPA(PAVILLON VENDOME FRANCE)。2016年『日本美術全集20巻』(小学館)に掲載。日清食品ホールディングス、豊橋市美術博物館にパブリックコレクション。