Newcomer

Newcomer Introduced by 山口祥平(大丸松坂屋百貨店 アートバイヤー)

アートに宿る深い魅力を伝えたい。
作品に込められたアーティストの魂を、
ART365が見いだします。

スペシャル対談 野原 邦彦 Kunihiko NOHARA

『曖昧と現実の間で』

形にならないもの、目に見えないが確かにあるものに姿を与える木彫アーティスト・野原邦彦。その瞬間にしかなくて、忘れられてしまう時間を創り続けている。野原が生み出すデフォルメされた造形が魅力的なのは、見る人に深い共感を抱かせることができるからなのだ。

野原 邦彦

野原 邦彦Kunihiko NOHARA

カプチーノ 紅梅(2021年)
カプチーノ 紅梅(2021年)
鯉花(2023年)
鯉花(2023年)

愛らしく奇妙。
そのミスマッチが人を魅了する

1982年北海道生まれ。2007年広島市立大学大学院芸術学研究科彫刻専攻修了。国内外で高い評価を得ている気鋭のアーティスト。作品のモチーフとなる人物や動物は、自らが持つ空間や香り、雰囲気、感覚、時間を量塊として身にまとい、愛らしくユニークでありながらも、拡張された神体としての奇妙さとミスマッチの間を行き来する不思議な魅力を放っている。彼自身は創作活動を「自分が感じ取ったさまざまなシーンを作品として形に残す」ことだと言う。木彫から創作フィールドが広がるにつれ、野原に共感する人々もますます数を増しており、若手現代作家の中でも特に注目を集める一人となっている。2010年より国内外の個展やアートフェア、企画展に参加するなど意欲的に活動。2017年には上野の森美術館で個展、2018年銀座蔦屋書店Art Atrium (Ginza Six)にて個展、2021年世界遺産二条城にて個展を開催。2021年大丸・松坂屋では、SDGs活動の一環として、「Think Green feat.野原邦彦」をツアーで開催。2022年3月の国内最大規模のアートフェア東京では、全長7mにもおよぶバルーンを展示して話題となり、アートフェア東京のシンボル的存在となった。2023年9月には、ザ・リッツ・カールトン東京において特別展「Floating moment」が開催された。

ひとときの幸せを遺すアーティスト。

制作風景
雲間(2022年)
雲間(2022年)
三(2020年)
三(2020年)

野原 邦彦Kunihiko NOHARA

「大丸札幌店での個展は3回目です。地元なのでたくさんの人に観てもらえるのが嬉しいですね。」と語る野原邦彦。北海道恵庭市生まれで、札幌市内の高校出身だ。「曖昧と現実の狭間で、もう少し曖昧なもの」こそが自分にとってのリアルだという。目に見えない想いや記憶、温度、香り、音などの集合体は視覚としては明確ではない。しかし、その“ひととき”は存在し、かけがえのない瞬間であることは確かだ。それらをかき集めて、一つ一つを組み合わせ形にしていくことが野原のスタイルであり、制作の基盤となっている。今会期に展示する巨大バルーンも心地の良い“ひととき”に包まれたスイマーが空中を浮遊し、鑑賞者を魅了するだろう。