Newcomer

Newcomer Introduced by 山口祥平(大丸松坂屋百貨店 アートバイヤー)

アートに宿る深い魅力を伝えたい。
作品に込められたアーティストの魂を、
ART365が見いだします。

スペシャル対談 苫米地 正樹 Masaki TOMABECHI

『ことわり×こだわり』

「自分がほしいもの」を陶磁で表現する苫米地正樹。ネイティブ・アメリカンが魔除けに使うバッファローの頭蓋骨は、陶磁で表現されると実物とはまったく違う存在感を帯びるようになる。陶磁の力を信じる苫米地の世界が興味深い。

苫米地 正樹

苫米地 正樹Masaki TOMABECHI

[GALLERY CLEF]

Buffalo(2024年)
Buffalo(2024年)

窯の中で起きる、偶然の変化を
楽しみながらつくる

高校生のときから、陶芸の公募展で受賞していた苫米地正樹は陶磁器商社の研究所を経て独立し、アーティストとしての活動を始めて21年になる。苫米地の現在の作品を代表する「Buffalo(バッファロー)」は、ネイティブ・アメリカンが魔除けにするバッファローの頭蓋骨を、モチーフにした作品だ。型に泥状の半磁土を入れて固まる前に余分な粘土を流し出し、薄い層になったものを焼成。重厚な骨を、軽くてクリーンな印象に変化させている。「作品には、技術とアイデア、偶然と自然が必要だと思っています。窯の中で起きる、人がコントロールできない偶然の変化が大切です」という苫米地は、制作途中の偶然性を楽しんでいる。

Kokena(2024年)
Kokena(2024年)

粘土や釉薬の可能性を信じて、
新しいスタイルが生まれる

「Buffalo」の他に苫米地が手がけるシリーズには、「Kokena(コケナ)」「Revamic(リヴァミック)」がある。「Kokena」は苫米地の造語で、ネイティブ・アメリカンのホピ族の居住地で出会ったカチナ・ドールという人形がイメージソース。精霊をかたどった人形をこけしの形にして、日本とのつながりを探った。「Revamic」も造語で、使われない粘土や釉薬をそれぞれ混ぜ合わせて、再利用した作品。均質な材料ではないために、「窯の中でどう変化するか予測ができない」ところがおもしろいという。「自分が楽しんでつくるものを、見る人も楽しんでくれたら」という思いから、どこにもないスタイルを持つ作品が生まれている。

Revamic招き猫(2024年)
Revamic招き猫(2024年)
Revamicスニーカー(2023年)
Revamicスニーカー(2023年)

苫米地 正樹Masaki TOMABECHI

1977年三重県四日市市生まれ。1996年三重県四日市工業高等学校セラミック科卒業。高等学校在学中には、炎博覧会ストリートファニチャー縮尺模型展入選、日清食品現代陶芸めん鉢大賞展入選、金沢わん・One大賞「優秀賞」受賞。四日市(株)スズ木に入社・工房「萬泥庵」にて作陶。1999年四日市萬古焼総合コンペ「四日市市議会議長賞」「奨励賞」受賞。2000年四日市萬古陶磁器コンペ準グランプリ。2001年金沢わん・One大賞「優秀賞」受賞。四日市萬古焼総合コンペ「三重県地場産業復興センター理事長賞」受賞。2003年独立。四日市市西阿倉川に築窯。2007年四日市萬古陶磁器コンペ「準グランプリ」受賞。2009年四日市萬古陶磁器コンペ「優秀賞」受賞。現在「けむり陶房苫屋」として活動。

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